省エネプロフェッショナルの伊藤智教です。
電力自由化の流れで、大手電力が持っている送電網がそれぞれ送電事業会社へと移っている。
東京電力・関西電力・中部電力・北陸電力など4つの大手電力送電事業会社が送配電事業で連携をすることで、保有しなくてはならない予備電力を低減してコスト削減につなげるという目論見である。
コスト削減で電気代が低減することは結構。
何よりも各社がおのおのの地域で需要全体の7%に相当する火力発電所を予備用に待機させることのインフラ維持が合理化できる。また、相互に融通することで、非効率な発電を抑制することができれば、温室効果ガスの排出量低減にも貢献する。
もっと早くやればよいと唱えてきたが、ようやく各社の合意が得られたようだ。
これも新電力効果の一つであろう。
新電力は、3.11を起爆剤として政府の電力市場開放策として広まっている。
競争環境は安穏としてきた大手電力に危機感を与え
これまで、大手電力は地域独占で競争環境になかった。従って、やればいという声や提案で、かつ、やればできることでも「やらない」という選択をしてきた。
しかし、これからも「やらない選択」を続ければ、市場から見放され、他社にスイッチング(乗り換え)されるることにようやく手を打ち出した。
その一つが今回の平時における電力融通であると思う。
さて、電力会社を選ぶ時代における需要家側に、今こそ注意が必要だ。
それは、公正な競争環境を維持することである。
具体的には、新電力からの提案を出汁に使って大手電力と価格交渉することである。
なぜそれがいけないのか?と思う方もいると思う。
それは、大手電力は分母が大きいから、あなたの会社に対してだけ、新電力と同じ価格で提供することは不可能ではない。
同じ価格になったとき、あなたはどちらを選択するだろうか?
(案1)価格が同じなら従来通りの大手電力を選択する
(案2)値下げのきっかけを作ってくれた新電力に切り替える。
もし(案1)を選択する会社が増えたとき、新電力は提案だけで営業費を使うのみで収益がえられないことになる。つまり廃業へと進む。
これは、新電力を(案1)を選択した方によって排除する行為となる。
もしこのようにして電力市場から新電力が消えてしまうとどうなるであろうか?
そう、答えは従来の大手電力の寡占又は地域独占に戻ることになる。
寡占や地域独占に戻れば、残った大手電力がこれまで歩んだ安穏とした原価積み上げ方式に逆戻りすることなんる。
新電力の登場によって得られたメリットが消失することがないよう、私たちは意識して公正な競争環境を維持する選択をしていくべきである。
この公正な競争環境が維持されてこそ、今回の平時電力融通などのアイディアが生まれ、実現すると私は思う。